創業物語 第2章

第1章 経営者に向いているのかな?
第2章 家族との別れ
1節 家族とのすれ違い
少し私の話しを聞いてください。
今年の7月のある日のことです。会社を1人で経営してちょうど6ヶ月が経った頃、
その時の私は仕事に没頭し過ぎて休みなく働いていました。
周りの友人や社長、家族には休んだ方がいいと言われていましたが、そのアドバイスを聞かずに仕事に没頭していました。
「もう無理、自分はなんのために仕事をしているのか」
それは水曜日のことです。うちの会社の定休日は水曜日ですが、
1人で会社を経営していると定休日なんて関係ありません。
電話の受付、見積書の作成などいろんな業務があります。
1人になってからはそれらの業務を1人でやる必要があります。
この6ヶ月に関しては休みなく仕事をしていました。
- 妻「ねえ、休みなのにまだ仕事してるの?ちょっとは家のことやってくれない?」
- 私「わかってるよ」
- 妻「わかってるって、毎週そうじゃん。かいちゃん(子)も見ないし、家のことやらないし、ねえ本当にわかってるの?」
- 私「うん。」
2節 なんで会社なんてやったの
毎週こんな会話を繰り返えしていました。家族のために働いているんだ。
なぜ仕事して文句を言われないといけないのか?
働いた分のお金もしっかり渡しているし、不自由はないはずなのに、
自分が仕事をすればするほど家族の仲が悪くなっていくことを薄々感じていました。
- 妻「もう、なんで会社やったの?」
- 妻「前いた会社の方が良かったじゃん。」
- 私「そんなん、ゆかに言われたくないし、なんでそんなこと言われないといけないの?」
- 妻「私は、かいちゃん見たり、家のことを全部やってるし、じゃあしんが全部やってよ。しかもさ休みの日なのに仕事してさ、電話もうるさいし」
- 私「お客さんからだから、しょうがないだろ。電話にでなくていいのかよ。ゆかだっていっつも怒ってばっかやん」
- 妻「しんのせいよ。だいたい誰のおかげで仕事をできると思ってるのよ」
3節 怒りがおさえきれずに
「誰のおかげで仕事ができる?」
その言葉を聞いた時怒りで我を見失って、言ってはいけないことを口にしてしまいました。
- 私「じゃあ、ゆかが働いて稼いでくればいいじゃん。早く勤め先でも見つけろよ。
今のゆかじゃ雇ってくれるところがないと思うけどね。」
妻の顔を見ると、目から涙が溢れていました。
いつもの自分ならやってはいけないことは、すぐに「ごめんね。」と謝るのに、
頭ではわかっているのに・・・
その時は怒りの感情が勝ってしまい、その怒りを隠すために自分の部屋にこもりました。
自分の部屋でさっきの出来ことを考えると、
「せっかく家族のためにがんばって働いているのに」
「妻と顔をあわせたくないから、明日は朝早くに行こう。」
「会社はうまくいっているのに、なんで妻は喜んでくれないのか」
「自分はなんのために働いているのか。」
4節 友人との再会
自分が仕事でうまくいけばいくほど、家庭での会話がすくなっていき、
喧嘩ばかりして、妻と気まずくなって、隙間は広がっていくばかりでした。
次の日の朝、仕事を言い訳にして朝早く出社をしました。
通勤途中の車の中でこのままじゃいけない。
どうすればいいのか?と考えましたが、答えが出ない。
仕事が終わり、夜も帰りたくなかったので、
妻に今日は遅くなるとと連絡し、その日の夜は、友人とご飯を食べることにしました。
- 小倉「池辺さん、なんか疲れてません?」
- 私「え?そう見える?」
- 小倉「そうですね。なんかありました?」
5節 社長なら起こること
- 私「じつはね、、、」
- 私「なんか家族と気まずくてさ、仕事をすればするほど、すれ違ってる感じ?
小倉はそうゆうことある?」 - 小倉「ありますよ。それは社長なら絶対起こる問題です。」
- 私「どうゆうこと?」
- 小倉「これは、推測ですが仕事が忙しいという状態は仕事があるからです。
社長が努力してきたからです。会社的にはいい兆候だとおもます。実際売り上げとかどうですか?」 - 私「確かに、前年と比べるとかなり上がっている感じ」
- 小倉「そうですよね。ということは金銭感覚や物事の価値観が社長はどんどん進化していきますが、
家族はそのままです。そうなると家族間で、価値観のズレや金銭感覚のズレが生じるので家族間の関係は悪くなりますし、
池辺さんの場合だと、現状の仕事の忙しさもあるので、しょうがないと思いますよ。」 - 私「なるほどね。結局どうしたらいいと思う?」
- 小倉「人を入れるべきです。人に教えるってことは、
最初はストレスが溜まると思いますが、それか奥さんをねぎらってあげるか。
それをしないと家族との関係がもっと悪くなると思います。」
6節 イケショウリフォームの礎
- 私「ねぎらうかー、今の妻との温度感だとなー、人をいれるって言っても、いい人がいないし、
前みたいにまた辞められたら、と思うとなんか人を入れるってのはな、、、」 - 小倉「めっちゃわかります。僕も一時期ありましたね。
僕も落ち着いてきたので、池辺さんには前の会社で恩もあるので、すこし僕に仕事を任せてくれませんか?
絶対できる自信があるので」
小倉との出会いは、前の会社の後輩で、私と一緒のタイミングで独立した関係でした。
やっている事業は違いますが、いつかタイミングが合えば一緒にできたらいいなと思っていました。
- 私「そろそろやね、本当この4年いろいろあったわ。だいぶ売り上げは安定してきたし、
このタイミングだし、少しずつだけど手伝ってくれる?」 - 小倉「任せてください。とりあえず池辺さんがやることがまずは体を休めてください。」
- 私「え?休むの」
- 小倉「はい。奥さんと旅行に行ってください。」
- 私「とりあえず旅行は落ち着いたらね。」
- 小倉「約束です。」
今思うと、初めて小倉に仕事を任せる時に、本当はすごい不安がありました。
自分1人でずっと突っ走ってきて仕事をしてきて、
自分じゃないとお客様は喜んでくれないし、「自分がやった方が効率いいし」と思っていたからです。
ただ実際に仕事を任せた時、お客様が
「本当に親身に話を聞いてくれて、うれしかった。」
「小倉君は、愛想いいよね。」
「こんなことまでやってくれるの?本当にありがとう。」
「最初は不安だったけど、頼んでよかったな。また何かあったらお願いするよ。」
「小倉に任せても、絶対大丈夫」だと、安心することができました。すこし肩の荷がおりた感じがしました。
7節 安心して大丈夫だよ
ふと、妻のことを考えると自分がこれから何をしなくちゃいけないか、わかった気がしました。
- 私「ゆか本当にごめん。今まで仕事に没頭してゆかのことを見ることができんくて、でも小倉がはいってくれてわかったんよ。」
妻の目からは涙が溢れてきて
- 妻「しんなら、すぐに謝ると思ったのに遅いよ。」
- 私「本当ごめん。ゆかも初めての子育てで、家のことから1人で全部背負わせてしまって」
- 妻「そうだよ。仕事ばっかりで、しんは何も手伝ってくれないし、誰にも相談できないし」
- 私「うん。うん。でもこれからは大丈夫」
- 妻「なんで大丈夫って言いきれるの?だってわからないじゃん。」
- 私「今のゆかの状況は前の自分と同じで、1人で頑張って、
相談もできないし休みもなくて辛いよね?全部1人で背負うと、辛いよね?
小倉が入ってくれて気づくことができたんよ。だから安心して大丈夫だよ。」
8節 気付き
妻の涙を拭いて、笑顔になった顔を見た時、
自分が今まで1人で走ってきて、小倉が入ってくれて見えなかったものに気づくことができました。
会社も家庭も全部1人だとできることなんて、何一つない。
小倉気付かせてくれて本当にありがとう。
私はこの出来事があって、思いました。
今の自分がいるのは、家族や小倉の支えがあるからだと。
人は誰かの支えがあって、生きていけると。
経営も同じで1人で会社を大きくすることはできないと。
そして、本当に心の底から信頼できる人と一緒に仕事することが
こんなに自分を成長させてくれるんだと。
9節 そして明日は
三郷から吉川市の本社事務所移転の日です。
狭くなった事務所を見渡すと、そこには小倉、橋本、反田さん、赤峯、戸部さん、田中さん、小林さん
みんなの嬉しそうな顔を見た時に、私は思うんです。
心の底から、
「みんなに出会えてよかった」と僕なんかを信じてここまで着いてきてくれて
本当に本当にありがとう。
今まで1人で走ってきて、ずっと孤独で何度も押し潰されそうになりました。
孤独の中自分なりに精一杯もがいてきました。
精一杯もがいた結果、従業員も一回全員やめて1人にもなりました。
その時僕を助けて頂いた三潴さんの「FCRさんが無くなってしまうと困るので、あと50年は続けて頂いて」という言葉。
小倉から教わった「人は誰かの支えがあって生きていける」ということ。
反田さんが入ってきた「俺に全部任せてくれていいよ」という言葉。
経営者になって辛かったこと、楽しかったこと、いっぱい経験しました。
その中の経験のほとんどは、辛いことの方が多かったと思います。
でも楽しかったことは、今でも頭の中から離れません。
試行錯誤して作ったチラシで、初めて電話があった日。
お客様が工事に喜んでくれて紹介をして頂いたこと。
工事をしたお客様から再注文があった日。
小倉、反田さん、橋本と始めて飲んだ日のこと。
家族と旅行が行けたこと。
10節 これからも私は
まだ起業して4年目です。
僕は辛いことを経験して、自分に負けそうになるかもしれません。
今は僕の周りには、心から信頼できる従業員と家族がいます。
彼らとだったら、どんな困難なことも乗り越えていけると。
最後になりますが、僕が1人になっても応援して頂いて、
未熟な私を信じて頂いたお客様、本当にありがたく思っています。
そして僕を支えてくれた従業員、ゆかり、本当にありがとう。
